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大阪高等裁判所 昭和38年(ラ)53号 決定 1963年5月24日

決   定

京都市南区西九条関ケ町一一番地

抗告人

西居正一

同市左京区岡崎西福ノ川町二番地

抗告人

西居万治

右両名代理人弁護士

小田美奇穂

立野造

同市下京区新町通松原下る、富永町一〇七番地

相手方

久保清三郎

右当事者間の京都地方裁判所昭和三七年(レツ)第二一号家屋明渡請求上告受理事件について同裁判所が昭和三八年二月二五日なした上告却下の決定に対し抗告人等から適法な即時抗告の申立があつたので当裁判所は次のとおり決定する。

主文

本件抗告をいずれも棄却する。

抗告費用は抗告人等の負担とする。

理由

抗告の趣旨及び理由は別紙記載のとおりで、これに対する当裁判所の判断は次のとおりである。

抗告人等が、京都地方裁判所昭和三三年(レ)第七五号家屋明渡請求控訴事件について、同裁判所が昭和三七年一二月一三日言渡した判決に対し同月二七日同裁判所に適法な上告の申立をしたが、同月二九日同裁判所から上告受理の通知書の送達を受けながら、その後民事訴訟規則第五〇条所定の五〇日の期間内に上告理由書を提出せず、昭和三八年二月二三日に至つてこれを提出したことは本件記録上明らかである。しかして右規則第五〇条所定の上告理由書提出期間は不変期間ではないから民事訴訟法第一五九条の適用を見ないことは当然であるけれども、上告人がその責に帰すべからざる事由により右期間を遵守することができなかつたときは、右期間経過後の上告理由書の提出も許されるものと解するのが相当である。しかしながらこの場合、その責に帰すべからざる事由とは、一般人が自己の訴訟を追行する上に通常用いると期待される注意を尽しても避けえられないと認められるような事由をいうのであり、単に上告人が法律に暗く、上告理由書提出期間やその期間内に上告理由書を提出しないときは上告の申立が却下せられることを知らなかつたため右期間を遵守しなかつたような場合に、かかる法律の不知に因る右期間の不遵守をもつて上告人の責に帰すべからざる事由によるものとなしえないことはもちろんである。そこで本件についてこれを見るに、抗告人等の自認する上告理由書提出期間不遵守の理由は、抗告人等の前記事件の控訴審の訴訟代理人は控訴審終了と同時にその任を辞したが、その際、上告手続について、裁判所から書類が来たときはその時から五〇日以内に上告理由書を提出しなければならない旨抗告人等に注意を与えたにも拘らず、抗告人等は前記のように上告受理通知書を受領しながら、更に裁判所から上告理由書提出期間を明示した書面が来るものと誤信し、ために上告理由書提出期間を徒過した、というのであるから、前説示のとおり抗告人等の責に帰すべからざる事由により右期間を遵守することができなかつたものとはとうてい言うことができない。抗告人等代理人は、上告受理通知書には上告を受理したという記載があるだけで、その到達後五〇日以内に上告理由書を提出しなければ上告を却下される旨の記載がないので、上告が適法になされたものと信じ、法律に暗く、民事訴訟規則第五〇条のような特別の規定を知らない抗告人等が、裁判所から何の警告もなく、その所定期間が経過したというだけで上告の申立が却下せられることは、一般に訴訟が長くかかる現状と考え合わせると、酷に過ぎるから、抗告人等が右のような事情で右期間を遵守しなかつたことも、また、その責に帰すべからざる事由によるものと解すべきである、と主張するが、その採りえないことは前説示によつて明らかである。

そうすると、抗告人等が上告理由書を所定期間内に提出しなかつたことを理由として民事訴訟法第三九九条第一項第二号により本件上告を却下した原決定は正当であるから、本件抗告はいずれもこれを棄却することとし、抗告費用の負担につき同法第八九条第九三条第九五条を適用して主文のとおり決定する。

昭和三八年五月二四日

大阪高等裁判所第七民事部

裁判長裁判官 小野田 常太郎

裁判官 柴 山 利 彦

裁判官 下 出 義 明

抗告の趣旨

原決定を取消す

手続費用は相手方の負担とする

との裁判を求める。

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